TRUNKでは、会社も自分も幸せになるためにやりたいことを「WANT」と呼んでいます。
2020年4月からはメンバーのWANTを実現させるための新しい取り組みとして、「TRUNKアトリエ」によるメンター制度がスタート。企画のプロフェッショナルであるTRUNKアトリエのメンバーとホテルの運営メンバーが二人三脚となり、ともにWANTの実現を目指します。
最初の事例として、2020年9月21日に実現し大盛況を収めた「KUSHICHA PAIRING with RYAKUBON」をご紹介します。
二人三脚でこのイベントをゼロから作り上げた、TRUNKアトリエの山岡重信とTRUNK(KUSHI)の坂本有矢がその裏側を語ります。
― 簡単に自己紹介をお願いします。
坂本:
串焼屋TRUNK(KUSHI)で一品料理(串焼き以外の料理)の調理を担当しています。2019年4月にアルバイトとして働き始めて、2019年12月に正社員になったばかりです。
山岡:
僕はTRUNK(HOTEL)のアートディレクター / ミュージックディレクターとして、TRUNKのアートディレクション、プロダクトデザイン、グラフィックデザイン、音楽ディレクションを手掛けています。
―今回企画したイベント、「KUSHICHA PAIRING with RYAKUBON」の概要を教えてください。
坂本:
TRUNK(KUSHI)の串焼きと、奥代官山の日本茶専門のティースタンド「TEA BUCKS」のお茶カクテルのペアリングコースを楽しんでいただく1日限りのダイニングイベントです。イベントの目玉として、現代アーティスト、トム・サックス氏のアート作品「Ryakubon2.0」で抹茶を点てるパフォーマンスも用意しました。「Ryakubon2.0」は、普段は神楽坂の一棟貸ホテルTRUNK(HOUSE)で展示されており、こうしてイベントに登場するのは大変貴重な機会です。
いつか挑戦したい自分の「WANT」を積極的に発信したことでチャンスを得た。
―おふたりが一緒にやることになったいきさつを教えていただけますか?
坂本:
もともと僕はTRUNK(LOUNGE)のイベントに遊びに来たことがきっかけで、TRUNK(HOTEL)で働きたいと思うようになり、入社しました。TRUNKに関心を持つきっかけとなった 「イベント」をいつか自分でも手掛けてみたいという思いが強くあり、周りにも公言していました。その声をTRUNKアトリエの小南綾さんが拾ってくれて、今回の制度を活用することに声を掛けてくださったんです。
山岡:
僕もちょうど誰と一緒にやろうかと相手を探していたのですが、彼のWANTなら山岡だ、と小南さんが紹介してくれました。それまで会話したことはなく、坂本君の第一印象は「悪そうなやつだな」でした(笑)。ただ、その悪そうな感じが僕は好きだったので、きっとフィーリングもあうだろうなと思いました。
坂本:
僕は山岡さんと一緒にやれると聞いて、すごく嬉しかったです。「え!?アートディレクターの山岡さんと一緒に!?」と。すごくテンションが上がりました。
「できないこと」の連続を乗り越えた先にあった達成感。
―今回のイベントはすごく魅力的な内容に仕上がっていますね。今回の内容となった背景を教えていただけますか?
山岡:
まず初めに、坂本君が持っている4つのWANTを聞きました。最初は漠然としていて、“Want To Do”じゃなくて、「俺は上に昇りつめたいんだ」とか“Want To Be”が混じっていました(笑)。それで一つひとつを一緒に掘り下げていきましたが、その中で見えてきた「他コンテンツと協力してイベントを開催したい」というWANT。これを広げていきました。
坂本:
TRUNKでは元々1コンテンツ内で完結するイベント、例えばTRUNK(KITCHEN)のダイニングイベントやTRUNK(LOUNGE)のパーティイベントなどは多いのですが、複数のコンテンツが連携したイベントはほとんどなかったんです。なので、TRUNK(KUSHI)の料理をTRUNK(LOUNGE)で食べたり、複数のコンテンツを行き来できるイベントをやりたいなと思っていました。
山岡:
ただ、企画を考え始めたのは4月。コロナ禍で緊急事態宣言が発令されて、休業真っただ中の時でした。なので、三密回避を担保するためにTRUNK(LOUNGE)と行き来するイベントは早々に断念して、TRUNK(KUSHI)でのソーシャル・ディスタンスを確保したイベントにシフトしました。ただ、やはりインパクトがあって魅力的なイベントに仕上げることが大切だから、そこからの座組みは色々と考えたよね。
坂本:
かなり考えましたね(笑)。まず、最初に考えたのは神楽坂の一棟貸ホテルTRUNK(HOUSE)とのコラボレーション。普段はエクスクルーシブなTRUNK(HOUSE)の料理をTRUNK(KUSHI)で体験できるイベントなら魅力なのではないかと。ただ、色々と詰めていくと予算など色々な面で実現が難しい。また、壁に当たってしまい、別の方向性がないか色々考えていました。それで煮詰まっていたのですが、そんな時山岡さんが「お茶とかはどうかな?」とアドバイスをくれて。「それだ!」と思いました。僕が好きで良く訪れていた「TEA BUCKS」が浮かんだのですが、お茶を中心にしたカルチャーを発信するというコンセプトも、ターゲットもTRUNKと合致。それで、予算も考えて、自分で先方に交渉してみて。先方が関心を持ってくれた時は本当に嬉しかったです。
山岡:
お茶のお酒はたくさんあるけど、フィーチャーされることがあまりないから、それを際立たせたらきっとお客様にとって面白いって思ってもらえるのではと思いました。和のもの同士で相性も良いしね。当初検討していたTRUNK(HOUSE)とのコラボレーションという話も、「Ryakubon2.0」を使ったパフォーマンスという形で残りました。このパフォーマンスがあることで「お茶」を際立たせることができたし、流れとしてもとても綺麗なイベントになったと思います。
坂本:
「Ryakubon2.0」はアート作品なので、実際に使用するのは難しいかなと思ってたのですが、山岡さんがあっさりOKって言ってくれてびっくりしました。
山岡:
元々、TRUNK(HOUSE)で展示するとなったとき、トムから「使ってもいいよ。もし壊れたら修理するから。」って言ってもらっていたからね。今回は、イベントでお客様の前で使用する初の機会になりました。
―そのようなプロセスを経てイベントが形になったんですね。一番大変だったことは何ですか?
坂本:
やっぱり「できないこと」が続いてしまい、その中で何とか形に持っていくためにものすごく考えたことです。あと、「費用対効果」など現実的な面をしっかりと検証しなければならないのが難しかったです。
山岡:
最初にやりたいと思ったことを決めうちで進められたらとても楽なんだけど、企画というのはなかなかそう簡単にはいかないからね。
でも、坂本君は壁に当たっても負けずに考え続けていたし、TRUNK(KUSHI)のメンバーもすごく協力的でアイデアや意見をたくさん言ってくれていた。すごく良いチームで進めることができました。
坂本:
TRUNK(KUSHI)のメンバーも、他のコンテンツのメンバーもみんな快く協力してくれてTRUNKの横のつながりの強さを感じました。山岡さんは、いつもいいタイミングでヒントをくれて僕を導いてくれましたよね。煮詰まっていた時に「お茶を絡めるのはどうかな」って言ってくれたり。
山岡:
まずは一度、坂本君自身で調べて、考える。そして何か困ったことがあったり、大きな判断をしたりするところは、一緒に考え抜く。こんな進め方でした。
僕自身、今回坂本君と一緒にやったことで色々と学びになったところが多かったです。いつもの企画業務も一緒に進めるに当たって何を考えるべきかを改めて整理する良い機会になりました。
さっき、坂本君が難しかったと言っていた費用対効果の検証ですが普段自分が主導で企画するときはもう少し楽観的に進めます。このイベントも組み上がった段階で、確実に良いものになっていると思っていたので自信はありました。ただ、しっかりと検証することで、漠然とした「自信」が根拠を付けて「間違いない」に変わる。これは企画において重要なことですね。
―実際にイベントは大盛況のうちに幕を終えましたね。
坂本:
有難いことに受付開始直後からたくさんのお申し込みをいただき、多くのメディアにも紹介していただきました。お客様にとってとても魅力のあるイベントになったと確信を持てたことで安心したのですが、同時に無事当日を終えるられるか緊張しました。でも、いざ当日を迎えてみると、TRUNK(HOUSE) プライベートバトラーの森祐輔さんによる「Ryakubon 2.0」のパフォーマンスもばっちりだったし、お客様も楽しそうにしてくださったし、お茶を仕事にされている茶人の方からも最高のイベントだったよというお褒めの言葉をいただけた。達成感は大きかったです。
山岡:
お客様にも、現場のメンバーにも、みんなに楽しんでもらえた。それは企画者としてとても嬉しいことだよね。
―何か今回の経験を通じて変わったことはありましたか?
坂本:
今後も何かイベントを企画したいなと意欲が高まっていて、私生活でもネタを探すようになりました。今回、プライべートで遊ぶ中で知った「TEA BUCKS」がイベントに繋がったこともあり、以前よりも積極的に遊ぶようになったと思います。特にTRUNKがターゲットとしている感度の高い方々と一緒に遊ぶ機会を多く設けて、彼らのアンテナや目線をキャッチできるようにしています。
山岡:
アンテナを張る、って大切なことだよね。僕も20代~30代の頃は遊び倒していました。新しい趣味を始めると、「プロと同等になりたい!」と思ってのめりこんでしまう性分なのですが、その中で人脈も形成できたし、今も仕事に繋がっています。全てが「遊び」から来ていると言ってもいい。
今後も、TRUNK(KUSHI)の中に留まらずにたくさん遊んでたくさん挑戦することで、きっと新しいWANTが生まれてくると思います。その時は、また気軽に相談して欲しいと思っています。僕に限らず、相談できる人はたくさんいる。TRUNKは、メンバー同士、垣根なく繋がることを大切にしている組織なのですから。
たくさんのメンバーの「WANT」で、化学反応を起こしていきたい。
―総括して、このメンター制度はどうでした?
坂本:
強いWANTがある人にとっては、これ以上ない制度だと思います。
この制度を活用して色々なことが形になれば、TRUNK(HOTEL)のカルチャーの発信拠点としての精度が高まるのではないかなと思います。この制度をうまく活用できるようになるには、自分のWANTを明確化して、日頃からどんどん発信し続けることが大切。僕も小南さんが拾ってくれたことで形になりました。
山岡:
化学反応によって、想像もしていなかったものを作り上げることができる。それがこの制度のいいところです。 運営メンバーからは、アトリエメンバーにとって思いもよらなかった案が出てきます。今、彼の他にも数名のメンバーと一緒にやっていますが、本当にWANTが多種多様。清掃を内製化したいとか、メンバーのファッションセンスを向上させたいとか。そのためのアプローチ方法を今一緒に考えています。 何が出来上がるかわからない、面白さがあります。
僕らクリエイターは、やりたいことを形にするプロフェッショナルです。
たとえ最初の案が薄かったとしても、一緒にいくらでも深掘るし、肉付けしていけるから、何かWANTを持っているメンバーがいれば、いつでも気軽に相談して欲しいと思っています。
【イベント当日の風景】
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